工藤日出夫 北本市議会レポート 第129号(2016年7月)

暑中お見舞い申し上げます

平成28年第2回北本市議会定例会(6月議会)は、6月23日市長提出議案を可決し全日程を終え閉会した。

 

しかし、副市長問題で、市長の対応が二転三転し、議会運営に混乱が生じました。初歩的な不手際で、稚拙な市政運営と言われています。詳細を報告します。


行田・鴻巣・北本の3市での「ごみ焼却新施設建設」問題

整備費最大300億円に膨らむことへの懸念

現在、吉見町に設置されている「ごみ処理施設」(中部環境保全組合)の老朽化に伴う、懸案であった新処理施設建設は、平成25年に議会全員協議会で「行田市・鴻巣市・北本市」の3市で建設することを決めました。

 

決め手は、

  1. 建設場所は鴻巣市長が鴻巣市内に決める。
  2. 建設費の概算積算(約120億円)

を提示したことでした。

 

その後、3市で組合を設置、平成26年から検討されてきました。平成28年2月に、基本計画を策定し、議会へ説明されました。

 

基本計画には、地域の概況やごみの量の予測、人口予測などに、概算事業費及び財源内訳、維持管理費の予測も記載されています。

用地取得費が未確定

この報告書で、

  1. 施設設置場所は、鴻巣市郷地安養寺(鴻巣カントリー隣接)。
  2. 処理量は、年間約66,700トン。
  3. 施設整備費は約2 4 9 億円。
  4. 財源内訳は、対策債・事業債(借金)154億円(62%)、交付金64.5億円(26%)、一般財源30.5億円(26%)。
  5. 年間維持管理費約6億円

となっています。

 

施設整備費には、土地の買収費等が含まれていません。現状で想定されている金額は、最大300億円程度が見込まれています。

 

3年前に、中部環境に残るか、鴻巣・行田に参加するかという議論の中で、鴻巣・行田が示した想定額は約120億円。それを大きく上回ることから、市長は組合執行部で検証の必要があります。


女性副市長空席問題対応不手際で二転三転

現王園市長公約「副市長に女性登用」実現せず、4月以降空席は違法?と議会で指摘受け、市長拙速で軽率な対応で議会混乱

昨年の北本市長選挙で、現王園市長の肝いりの選挙公約の一つに「副市長に女性登用」があります。しかし、適任者が見つからず4月1日以降、空席になっていました。

違法性?認め人事議案提出へ

この副市長空席について、6月16日の一般質問で、ある議員が「副市長空席」と「副市長の空席の期間一般職員に理事として副市長を代行させるのは、地方自治法に違反しているのではないか」と質問しました。

 

現王園市長は「今議会中に副市長の選任議案を提出します」と、サプライズ答弁しました。これは質問した議員が指摘した「違法性」を認めたものであると、議会にざわめきが起きました。

 

質問した議員は、4月1日に発行された朝日新聞の記事「北本市副市長が空席 女性登用、実現せず」にある「副市長空席」の経緯と、理事職の設置で「副市長の代役をさせる」とした市長のコメントが発端です。

 

地方自治法第161条は「都道府県に副知事を、市町村に副市長村長を置く。ただし、条例で置かないことができる」と規定しています。

議案質疑の後に「撤回」へ

一般質問終了後、現王園市長は議長に「副市長の人事議案を追加提出する」と内示をしましたが、翌日取りやめ。それに代わり「北本市に副市長を置かない条例」を追加議案で提出すると申し入れがありました。

 

6月21日に本会議で議案質疑が行われました。質疑では、「違法性について」や「副市長置かないことで市政運営に支障はないのか」等の指摘がありました。議員の質疑に、明快な答弁できずにいました。

 

質疑終了後、急転直下「副市長置かない条例」を撤回すると議長に申し入れがありました。本来、追加議案は、重要性と緊急性のある場合に提出するもので、「撤回」などあり得ません。

 

違法性についても、明快な説明があったわけでなく、説明責任は不透明のままです。稚拙で不手際な政治判断に、議会含め関係者、傍聴した市民は、今後の市政運営に大きな懸念を持ちました。

 

市長は「この間、議会を混乱させ強く反省します」と陳謝しました。


第五次北本市総合計画否決!

議会「消滅可能性都市からの脱皮」の道筋見えずと

総合振興計画は、北本市のまちづくりを進める、事業や予算を組む時の指針となるものです。そのため、すべての計画の最上位に位置付けています。市はこれまで、昭和53年から4回策定しています。

 

今回は5回目の第五次で、平成28年度を初年度に10年間の計画です。自治基本条例に「市長等は、総合計画に基づいて市政運営しなければならない」と規定し、大変重要な計画です。

少子高齢人口減少問題

議会は、この重要な計画を、賛成なしで「否決」しました。通常では考えられないことです。

 

しかしながら、否決しなければならない重大な理由がありました。

 

北本市は、2年前に民間の調査機関(日本創生会議)から、30年後に消滅可能性都市(20代~30代の女性半数)と名指しされ、市民の皆様に大きな衝撃と不安を与えました。また、この人口減少問題と、これからの1 0年後以降、7 5歳以上の高齢者が大きく増加し、「超高齢社会」が到来することが同時進行することへの、明確な対応が必要になっていました。

課題への対応不十分

しかし、提案された計画には、重大な構造欠陥があり、かつ北本市が直面する重大な課題を改善できないことが分りました。このため、現王園市長に議案を撤回し、計画を作り替え、再提出を求めました。

 

一方市長は「議会で修正」を望みました。しかし議会は、予算編成など市長の権限に直結するまちづくりの指針であることから、議会で出された意見を踏まえ、市長が再提出すること等を主張し、やむなく「否決」としました。

市再生の実行計画へ

さて6か月にわたる特別委員会の審査では、各委員は「市の再生を願う」建設的な意見が多くありました。一方、市長等には、北本市の再生に向けた危機感や意気込みの「気迫」が不足しているように見えました。また、市長との討論でも、市再生のビジョンは見えませんでした。

 

市側に明快な方針がないことで、市長が「議会での修正依頼」につながっているとしたら、自覚がなさすぎます。いずれにせよ、北本市再生に向けて、市民に呼びかけ、議会を巻き込み、市の総力をあげて「総合振興計画」づくりを進めなければばなりません。

 

北本市には、まだまだ可能性があります。北本市再生は、計画作りがスタートです。


工藤日出夫の一般質問から

「自治基本条例順守義務」と「市長の選挙公約」への答弁は、質問者の意に答えない意味不明で矛盾

工藤は6月20日一般質問しました。「自治基本条例の順守義務」と「市長選挙の公約」等についてです。

市長、条例の用語の意味理解していない

さて、一般質問の目的は、現王園市長は、就任以来「北本市自治基本条例」を、守るべき、と強く主張されていました。したがって、市長は自治基本条例をどのように理解し、市政運営されているか確認するためでした。

 

市長の答弁を聞いて驚きました。あれほど条例順守を強弁していた「自治基本条例」の、用語の意味を理解していませんでした。

 

「石津前市長は条例を守っていない」と批判していたが、現王園市長は、条例を理解し切れていないことが分かりました。

女性副市長育成し登用と答弁の後、副市長置かない条例提出の矛盾

選挙公報は「公約である」と答弁しました。

 

選挙公報に「副市長に女性登用」と記載しています。「登用」は内部から引上げるという意味です。

 

市長に就任して1年過ぎた今も登用されていないが、女性職員に適任者がいなかったのかと質問したら「これから育成し、任期内に登用します」と答弁しました。

 

しかしこの後「副市長置かない条例」を提出しました。

 

整合性がないばかりか、矛盾しています。置かない条例は、その後、前述のように「撤回」されました。

質問を終わっての感想

現王園市長の答弁は、質問者の意をくみ取る意欲が乏しく、そのため、具体性に欠けることが多くあります。

 

議会は言論の府です。互いの「意」をくみ取りながら、熱っぽく議論することが熟議につながります。そうあるべきではないでしょうか。

 

条例はもう一度深く検証し、軽率な答弁はするな。公約は守るのが難しいのなら、市民にきちっと説明し謝罪のうえ修正せよ。質問した事項には、具体的かつ明快に、根拠のある答弁して頂かないと、一般質問の意義がなくなると、きつく申し上げました。


トピックス: 市長「新駅建設を容認する」答弁

新駅問題に「終止符を打つ」との整合性は?

昨年の市長選挙で「新駅に終止符を打つ」と公言。市長就任後も一貫して否定的であった「新駅建設」問題。

 

6月議会で、ある議員の一般質問に「私は新駅そのものを否定しない」と答弁。

 

また、総合計画の委員会でも、「議会が総合計画に新駅を入れても拒まない」と発言。

 

新駅建設を容認する姿勢に変わったのであろうか。

 

一方、市民からの公開質問に、現王園市長は「新駅はできない」と回答している。どちらの発言が真意なのか。選挙で公約した「自治基本条例を守り、新駅問題に終止符を打つ」との整合性をどうするのか。

 

日頃から、相手に合わせての発言が目立つ市長。変節なら有権者への説明が必要。女性副市長への対応含め注目だ。


編集後記・雑感

6月議会の報告(議会レポート)をお届けします。

 

選挙から一年過ぎ、市長も議員も「若葉マーク」もとれ、いよいよ本格的な議論の到来です。すでに議会は、総合振興計画審査特別委員会で、熱い建設的な議論が交わされました。

 

北本市は、消滅可能性都市から持続可能性都市への転換が課題です。そういう中で、現王園市長の仕事は、石津前市長の12年間のワンマン市政と思い付きの事業優先から、計画的な市政運営へ転換を図る。職員の能力開発と人材活用。そして慢性的に進む「人口減少」問題と超高齢社会への対応です。

 

その計画的な市政運営の指針である「第五次北本市総合振興計画」を、実効性ある計画に作り変えることです。その上で、ヒト・モノ・カネ・コトの総合的マネジメントを着実に、確実に実行し、「消滅可能性都市」からの脱皮を、確実なものにすることが最優先です。

 

北本市に時間的猶予はありません。人海戦術含め総合力で乗り切ることが必要です。




工藤日出夫議会レポート第129号(2016年7月)
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