工藤日出夫 北本市議会レポート 第130号(2016年10月)

紅葉の便りが届きました

猛暑の夏もいい気に過ぎ、朝夕めっきり秋めいてきました。今年は台風の上陸が多く、九州や東北・北海道で大きな被害が出ました。

 

9月議会が閉会しました。今議会は、平成27年度決算が主要議題でした。議会は、議員の真剣な議論がおこない、市長提出の議案すべてを可決しました。


平成28年第3回北本市議会定例会(9月議会) 8月29日(月)開会・9月23日(金)閉会 〜 平成27年度決算等21議案可決

「第五次総合振興計画再策定に関する請願」は不採択。「新庁舎の定礎を公金使わず戻す請願」は採択される

9月定例議会には、市長提出議案として決算7件、条例1件、工事契約や人権擁護委員の推薦などの議案5件、補正予算7件は全部可決しました。また市民が提出した議員提出請願2件は、1件が採択、もう1件は不採択という結果でした。

 

一般質問は、9月14日から議長をのぞく全議員19名が登壇しました。工藤日出夫は、16日(金)に行いました。他に、「北本市議会基本条例制定」特別委員会も中間報告しました。


今議会は、平成27年度の決算が主要議題で、他に市営野球場の防球ネット整備事業の請負工事契約締結、一般会計補正予算などです。また、市民が提出した請願2件です。概要について述べます。

予算は前任者、新市長執行の決算

平成27年度決算は、石津前市長が編成した予算を、現王園市長が執行したものです。セーフコミュニティ事業や文化事業の一部に、縮小又は中止したものがあります。

 

もともと市長選挙に立候補を表明された現王園市長(当時は議員)は、石津市長(当時)編成の予算に賛成しています。したがって、予算執行に大きな差異はないものですが、どのように執行し、どのような行政効果を挙げたか議会は検証する必要があります。

庁舎建設終わり決算額減少

各項目の決算額は、表1の通りです。

一般会計は、歳出決算額190億3,037万6,992円で、平成26年度比19億1,279万7,905円減額となりました。新庁舎建設が終わったことが主な要因です。

 

市税収入は、91億7,750万円で前年比1億5,552万円減額しています。市の自主財源比率は56%と、昨年比0.8%の増ですが、決算額では9億1,551万円の減となりました。要因は庁舎建設基金からの繰入金がなくなったことによります。

財政の硬直化進む

決算カードで見ると、地方債残高は、242億8,039万円で、平成26年度比2億1,993万円減少しています。財政の柔軟性をあらわす経常収支比率は89.6%と平成26年度比3.2%上昇し、財政の硬直化が進んでいます。

 

また、義務的経費比率は50.4%と平成26年度比7%上昇し、財政の健全化に課題を残しています。

=新庁舎の定礎石を元に戻せの請願可決=公費負担せず!市長どう対応?

市民から出された「新庁舎の定礎石、公費負担せず元に戻せ」の請願が可決しました。工藤の会派は、公共財産を公費以外で修繕することはできない。また、再度税金を使うことは、市民の理解が得られないと修正動議を提出しましたが、否決されました。

 

もとは、市民からの要望であったとしても、定礎石から竣工時の市長名を削るのは、「狙い撃ち」のような印象を与え、判断には違和感があります。このことで、3月議会以降一般質問等で取り上げられています。

 

いずれにせよ、公費負担せずに元に戻せの請願は可決しましたので、議会及び市長はどうされるのか注目です。

新規事業の開発研究提案否決

現在市が改訂中の「第五次総合振興計画」の再提出に向け、「委員会の意見集約の尊重」と市が直面している人口減少や超高齢化へダイナミックに対応するため、新規事業の「開発研究」を計画に位置付けることを求めた請願でした。残念ながら、不採択でした。

 

審査した委員会に請願者が出席し、消滅可能性都市から将来にわたって持続する都市へ転換させるには、第四次までの事業を継続させても、展望は開けない。各種データに基づき、人口対策、高齢者対策、企業誘致や産業育成など、新しい視点と発想で「新規事業の開発研究」を基本計画に示し、可能性のあるものから順次推進する必要がある述べました。

 

緑風会は採択すべきと「賛成討論」しましたが、多数にはなりませんでした。市の未来に懸念を持っています。


四輪クドウの独り言

東京都知事が小池百合子氏に代わり、豊洲市場と東京オリンピック問題が、マスコミを中心に大きな話題になっています。

 

報道で聞く限り、巨大都市の行政は、知事の意向は別に、官僚が中心に業務が行われ、責任の所在が不明な、まさに「伏魔殿」になっているようです。

 

豊洲市場も、オリンピックも税金で成り立った「公共事業」です。公共事業の伏魔殿化は、国、東京都だけでなく、多くの自治体で行われているのか。世間の常識とかけ離れています。


野球場防球ネット整備に1億5,546万円

市長、金がないと言いながら硬式ボールの使用許可するため多額な税金投入。高校野球で経済振興というが…?

9月23日、北本市議会は総合公園内の野球場に、1億5,546万1,680円の財源を投入し、防球ネットを整備する「請負工事契約」議案を、賛成多数で可決しました。工藤は、平成28年度予算審議で防球ネット整備事業の「費用対効果」に疑問を持ち、慎重な対応を求めてきました。この日の採決では、反対討論した後「反対」を表明しました。

 

市内には、常時硬式球を使うチームは見当たりません。だれのために、何のために整備するのでしょうか。人口減少対策等の次につながる政策が優先ではないでしょうか。

防球ネット整備の前にやるべきことがある!

工藤が反対した理由は、利用者が限定的な硬式球使用のために、1億5,546万円の税金を使い防球ネット整備の前に、これまで財源がないと先送りされている

  1. 保育所の建て替えや子育て支援、教育の充実。
  2. 救急医療と介護、貧困対策などの生活支援。
  3. 生活道路の改善、中小商工業対策など、

北本市が直面している重要な課題へ投資し、未来へ持続する施策を優先させるべきということです。

付帯決議尊重されず

総合公園野球場の防球ネット整備事業は、平成28年度当初予算に約1憶8千万円が計上され、建設経済常任委員会は慎重審査の結果、次のような付帯決議を議決しました。

  1. 建設に際し、受益者負担の観点から関係者等も建設実現へ向け寄付等を募るなどの努力を促すこと。
  2. 事業費の削減に努めること。

既報(第128号)で知らせたように議会「建設経済委員会」が事業費の縮減等の付帯決議をしています。しかし市は、入札を行い契約予定者を決定し、議会の承認を求める議案を提出しました。契約金額は1億5,546万1,680円です。

地元高校への配慮は

防球ネットの問題は、石津前市長時代、ふじみの市のプール事故を受け、ファールボールが場外に飛来落下し、公園利用者に危険が及ぶ可能性があるとのことから、硬式球を使用禁止したことです。禁止の影響を受けた北本高校野球部関係者等から、硬式球の使用制限解除と防球ネット整備の要望が出されました。

 

私は、北本高校野球部が使用できる条件を検討し、その結果、

  1. 大型のバッティングゲージを設置し、フリー打撃とシートバッティング(試合形式)練習を可能にする。
  2. ホームベース上にネットを張り、球場外への飛来を防ぐことで、練習試合のできる環境を整備する。

といった方法を考えていました。

経済振興数値示せず

この方法だと2千万円前後でできます。県立高校の支援に、1億5,546万円は多額過ぎます。最小限の費用で行うべきです。totoからの補助金1,600万円以外の事業費の大半が借金です。

 

現王園市長は、高校野球の公式戦等を行い、地域活性化や経済振興につなげると言いました。しかし、議会での議論を通しても、市長は金がないと言いながら、地域経済振興の数量的試算はなく、スローガンに1億5,546万円は無謀です。多額の財源を投入し、効果の数値を出せない事業です。

 

また、付帯決議の寄付についても、整備後に野球関係者にお願いすると答弁しています。整備前に「寄付」を募るから集まるのであって、整備後にどれだけの寄付が集まるのか、おのずと結果は明らかです。

整備後も検証厳しく

議会は、このような状況でありながら賛成多数で可決させました。賛成した議員は、「請願」が採択されていることから、議案に意見は無いようでした。

 

工藤は「生活者起点・納税者納得」を基本に判断をし、「防球ネット整備の前にやるべきことがある」と反対しました。「費用対効果」を数値で説明できない以上、賛成はできません。整備後は、経済振興など事業効果を厳しく検証していきます。


中丸地区ごみ埋め立て跡地公有化の法的根拠について

減価分の損失補償なら速やかに金銭で償え

中丸地区ごみ埋め立て跡地は、昭和56年から4年間、家庭ゴミなどを埋め立て、昭和60年に地

権者に返還しています。その際、賃借・補償契約に基づき、作毛損失補償金を支払っています。

 

平成16年に地権者が「中丸8丁目まちづくり協議会」を設置し、地区の特徴を生かした新たな土地利用に取り組むことなりました。平成21年には、公有化を求める請願が採択され、議会決議もされています。

 

このような背景を受け、平成28年度予算に「公有化の為、土地開発公社への債務負担行為約2億6千万円」が計上されました。現在公有化に向けて進めていますが、その法的根拠について質

疑しています。

 

市は、地権者に多大な迷惑をかけているので、「減価分を損失補償」すると説明しています。損失補償なら、金銭で償うのが原則で、土地を買い取る「公有化」の必要はないはずです。

 

地権者が「公有化」を主張するなら、地権者は「土地賃貸借・補償契約不履行」など、民事賠償請求すべきです。その結果、土地を買い取る合意( 例えば「和解」)がされ、議会が承認すれば、最も合理的です。

 

公有化をすると、次に新たな公共事業が行われ、大きな財源が必要になります。今も、防災拠点やパークゴルフ場が計画されています。市民は厳しい目を!


編集後記・雑感

現王園市長は就任から一年半が過ぎました。この間、発言が二転三転し、議会が混乱しています。6月議会は「副市長問題」で、9月議会は「答弁の撤回」で議会を空転させ、その都度陳謝しています。

 

また、期待した「市政一新」も、「行政は継続」との方針で、前任者の政策を自ら再検証することなく、市政運営をしている印象です。昨年の保育所再編や第五次総合振興計画、中丸地区のご

み埋め立て跡地の公有化、パークゴルフ場の整備も、石津前市長のやり残した政治課題です。市政一新の観点で検証されたということはないようです。

 

選挙で、あれほど強調した「新駅建設に終止符を打つ」も、新駅建設を「否定していない」と発

言したり、その一方で「新駅は進めない」と答えるなど、真意がつかめません。

 

新庁舎の定礎石から、石津前市長の名前を削除したのも、軽率であったと関係者に謝罪したよう

ですが、ある議員は「愚かな判断」と討論されました。

 

北本市は、市外へ若者が転出し、少子化と社会減が10年続き、人口減少問題の解決が喫緊の課題です。一刻の猶予もありません。議会の混乱はNGです。




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