工藤日出夫 北本市議会レポート 第148号(2018年10月)

9月定例会閉会。平成29年度決算承認。手話言語条例制定

平成30年第3回(9月)定例議会が、9月25日閉会した。

 

市長提出議案の平成29年度決算は同意された。また、聴力に障がいのある人たちの手話を言語とする「手話言語条例」も可決した。この条例は障がいのある人たちの団体からの強い要請もあり、今議会に提案されていた。

 

また補正予算についても可決。さらに市民が要請した請願2件も可決した。平成28年12月議会に設置した「新庁舎建設疑惑解明の調査委員会」の最終報告書が議決された。

 

9月定例会の概要を、以下に述べる。

平成29年度決算額約329億1,700万円承認

北本市議会は9月定例議会で、平成29年度一般会計決算(歳出決算額19,117,915,402円)および5特別会計決算(歳出決算額13,799,791,298円)の合計32,917,706,700円の決算を認定した。他に公営企業会計に変わった下水道事業の決算も認定された。

 

市税は90億6,454万円で前年比-3億8,318万円。

めざせ!毎日1万歩運動に一人14,230円の経費

この事業は県から2,394万円全額補助金であるが、参加者は1,682人で一人当たり14,230円でした。一人ひとりの健康寿命を延ばす運動は、税金に頼らず自己力で続けたいですね。


手話を言語とする「北本市手話言語条例」制定

聴覚障がいの方々の団体から要望のあった手話を言語とする条例は、全会一致で制定されました。ノーマライゼーション社会への着実に進んでいます。

子ども子育て支援事業の周知を求めた請願可決

中央保育所の立て替えなど、保育に関する通知や情報をオープンにして、市民参画の機会をつくってくださいという保育所父母会からの請願でした。私は賛成討論で「情報共有と市民参画は、民主主義の原理。このような請願が出ることに政治の側は反省すべき」と申し上げました。

議員及び市長の選挙の公費負担の条例改正可決

議員と市長の選挙で、選挙運動のビラの公費負担。これまで議員の選挙ではビラの配布は認められていませんでしたが、来年の選挙から公費で作成費を負担配布できることになりました。

久保区画整理事業とデーノタメ保存に意見多数

久保区画整理事業が遅れているのはデーノタメ遺跡保存が決まらないからと。今議会でデーノタメの遺跡保存と久保区画整理事業について質問が多数の議員が行った。


新庁舎建設工事の疑惑解明の百条調査委員会1年8カ月の調査を終了し報告書提出。市議会、前市長、担当職員、損害賠償請求、再発防止等報告。児童館トイレ化粧キャビネット未施工などで業者に約438万円の損害賠償請求勧告

北本市議会は、9月7にの本会議で「新庁舎等の公共工事等の調査特別委員会」(委員長:工藤日出夫)が提出した調査報告書を全会一致で可決しました。

 

この調査委員会(地方自治法第100条で設置)は、平成24年度から26年度に建設された北本市新庁舎の工事に、「不適切な事務執行があり、疑惑の解明」を求めた監査委員からの報告を受け、平成28年12月議会で8人の委員で設置されました。

 

1年8カ月に及ぶ調査で、37回の委員会を開催し、延べ37人の証人尋問を行いました。また、関係各機関から記録の提出を求め、それらを整理・検証しました。

 

報告書では、児童館トイレの化粧キャビネットの未施工などの建築費約438万円を業者に返還請求することを勧告するとともに、執行監督を怠った議会の責任、前市長及び担当職員の責任と再発防止を報告しました。二度とこのような事務が行われないように8人の委員は取組みました。


特集 : 空家・空地増加の中、新しい宅地供給に活路あるか 〜 久保区画整理事業の不都合な事実

資金計画破綻状態の事業計画での先延ばし許されない

9月議会における、わたし工藤日出夫の一般質問。「久保区画整理事業は計画通りに平成37年度完成するのか」との問いに、市長及び担当は「難しい。困難である」と答弁された。

 

ひと月前の8月に、久保の権利者に「平成37年度完成の予定で進めています」と説明していたが、それを覆(くつがえ)したのである。なぜ覆ったのか。

資金不足で事業停滞 〜 平成37年度完了困難と

わたしは、久保区画整理事業の一般質問をするにあたり、事業計画等について調べた。その中で、事業計画には「区画整理法」で、資金計画書の作成が義務付けらているので、執行部に提出を求めた。

 

提出された資金計画書は5回変更されていたが検証した。また、資金計画書に毎年度の実績数字を入れると、区画整理事業がなぜ進捗率が39.5%と大幅に遅れたのか推測できた。

 

市は、これまで区画整理事業が進まない理由に、平成12年のオオタカの営巣発見。そして平成20年に発掘された「縄文遺跡(デーノタメ)」の保存方法が決まらないことを上げてきた。

 

しかし、それも一因ではあるが、本質的には「財源の不足」が理由であった。

 

すなわち、久保区画整理事業の資金計画書に基づく事業計画は、すでに「破たん」状態である。何より、第五次北本市総合振興計画前期期基本計画の、5年後(平成32年度)の事業進捗目標値66.1%(平成29年度実績39.5%)の達成は困難と、市は答弁したことでも明らかである。

事務費使って事業進まず 〜 不合理な事務執行20年間

また市は、区画整理地内の要移転者の残り50軒に、毎年2~3軒の移転できると説明しているが、これでは25年間必要である。これでは平成37年度完了と言えない。

 

住民への説明では平成37年度の完了の予定で進めていると説明しても、議会の一般質問の答弁では、そのように言えない。なぜなら、私は年度別事業資金の実績数字を表にして示して、一般質問しているからである。

 

まさに市は、「財源不足」という不都合な事実から目をそらし、オオタカとデーノタメを理由に、久保区画整理事業の課題を、この10年間思考停止させてきた。

 

それなのに、事務所を設置、職員を配置してきた。結果、図2にあるように、工事費(事業費)の実績が予算の35%であるのに、人件費等の事務費が70%の執行と、不合理な事務執行が20年間続いてきたのである。

保留地処分先行き不透明 〜 更なる市民負担増に懸念

歳入を見てみると、これも深刻な破たん状況を示している。

 

区画整理事業の財源は、国の補助金と保留地処分金、それに市の単独費(市債含む)である。そのため、地主(権利者)は、道路等の公共減歩と保留地減歩が求められる。

 

図3によれば、国費等(国費・県・道路)の他会計は約40憶円(36%)。市(単独費・市費)は約47憶円(43%)。保留地処分金は約2 2 億円(20%)となっている。

図1は、国費と保留地処分金と市単独費推移の比較であるが、保留地処分金が当初の35憶円から22億円に減っている。

 

反面市単独費が、約20億円から27憶円と増額している。そして国費も、最大約29億円から27億円に。結果として、市費及び市単独費(市民負担)が増額することになる。

 

特に保留地処分は、計画で20,300㎡であるから、1㎡約107,000円(坪375,000円)で試算している。市内で不動産業を営む人は、駅から遠い久保地域ではこの価格で買う人は少ないし、今後も地価の上昇は見込めないだろうと。

 

保留地処分金の予定22億円を下回った場合、その分は市の一般財源から繰り入れると市長は答弁した。

新たな成長分野に優先投資を 〜 待ったなし!改革急げ

近年北本市は、中心市街地周辺で高齢化と人口減少に伴い空家と空地が増えている。

 

この状況は、市の地盤沈下の一つであり、早急に対策が必要である。そういう中で、「駅から離れた地域に宅地を供給する意味があるのか」との問いに、市長は「新しい街を形成して活性化を図る」と答弁された。

 

わたしは「市の活性化に向けた喫緊の課題は、若者の未来や成長分野への投資を優先することではないか」と質問したが、市長は「権利者のことを考えると事業はこのまま続ける」と答弁した。

 

区画整理事業の施工者は市であるから、市の責任は重い。したがって権利者の意向を最大限に尊重しなければならないが、市の財政状況を踏まえると、今の計画のままでの先送りはできないと思う。

 

市は、10年後に15億円前後の市税が減収すると見込んでいる。それだけに政策を大胆に転換し、未来への投資を増やしていくことが重要である。

 

待ったなし。区画整理事業の抜本的改革を、権利者含めた市民に専門家を加えて進める時が来ている。


編集後記・雑感

6月議会で休んだ一般質問を行いました。

 

●久保区画整理事業がなぜ停滞しているのか。市民からの依頼を受けて調査をしました。それは停滞の原因になっている事実を確認することでした。市長との議論の結果は2面をご一読ください。この事業は、先延ばしすればするほど市民負担(財源投資)が増えます。しかし、区画整理事業の影響は、久保の権利者にとっても深刻です。市長に、財政状況等説明し、どうすべきかを久保の権利者とひざ詰めて話し合うことを提案したが消極的でした。

 

●3人の議員が、デーノタメの遺跡保存で現王園市長が地権者宅を訪問し「国指定で保存する」と挨拶に行ったかと質問。市長は「そのような事実はない」と答弁し否定した。地権者は相続が発生し物納を考えていたが、市長の言葉で金融機関から借金し納めた。毎年金利が数百万万円。国指定とは、デーノタメ保存地の買取りの財源を国が80%の補助。市は今年中に保存方法を決めるようだが、決め方によって地権者は死活問題のようだ。




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