工藤日出夫 北本市議会レポート 第142号(2018年4月)

人口減少へ対応する予算審議の平成30年第1回定例議会終わる

第五次北本市総合振興計画の目標人口達成困難の見通し

北本市議会は、平成30年第1回定例会を3月22日全日程を終了し閉会しました。今定例会は、2月26日に開会し平成30年度一般会計並びに特別会計予算と条例等の議案が提案され、総括質疑、議案質疑、委員会審査において議論され、市長提出議案33件はすべて原案通り可決しました。

 

また、12月議会で否決された「深井グランドの買取り議案」は、再提案され可決しました。市民が出された請願2件は1件は採択、もう1件は一部採択という結果になりました。


一般会計予算 195億9,400万円 歳入の柱 市税は3憶2,400万円減収

平成30年度の一般会計歳入歳出予算195億9,400万円が可決しました。また5特別会計と1企業会計の歳入歳出予算も可決しています。このことで平成30年度の事業は滞りなく開始されます。

 

一般会計の市税収入は、87憶1,492万円で前年度より3億2,430万6,000円減っています。大手自動車製造会社の一部撤退に伴う影響です。

 

また、国庫金は微増したが、地方交付税は1億2,000万円の減でした。

 

市が公表した財政計画では、人口減少などの影響で市税は平成39年時の推計で70億円と7億円減収となる予定です。

新規事業で次の展望は

新規等重点事業は、人口減少対策としてのリーディングプロジェクトの若者の移住定住のための補助金や子育て日本一のこども医療費中学生まで無料、道路補修費、観光・交流人口に向けた事業(森林セラピー)があります。

 

また、桜国屋のリニューアルに向けた計画策定や産業振興ビジョンの改定なども計画されています。

 

特別会計では、今年度から県単位になった国民健康保険制度改正により、国民健康保険税の大幅な改定がありました。低所得者に配慮しているようですが、全体に引き上がっています。

 

市民の健康と命を守る社会保障制度であり、これ以上の負担感を高めることには慎重であるべきと考えています。

埼玉の人口減少先進市

現王園市長は予算案の提案説明で、「人口減少が今後も続くので、リーディングプロジェクトの着実な実施をする」と述べました。

 

しかし事業の若者移住の補助金やこども医療費無料化の対象拡大等の事業は、すでに他市においても行われており、これで人口減少を抑制できるかは、見通せていないようです。

 

答弁で市長は「第五次総振の目標人口の達成は困難である」との趣旨の発言をしています。

 

本市の人口減少は、平成17年から始まりここまで一度も改善されていません。まさに人口が増加していた埼玉県の市町で数少ない「人口減少先進都市」です。

 

確実に増やす又は抑制できるという合理的理由を持たないまま、貴重な財源を使うことは慎重であるべきです。

新しい成長戦略を

人口減少でも、住民の福祉を保障する。人口減少の中で新しい地域の経済社会をつくる。圏央道開通の新アクセスのメリットの開発研究をする。発想の転換でダブーに勇気をもって挑戦する。「しがらみや縁故主義」を見直し、新しい成長戦略を構築しなければならない時期に来ています。

 

私たち会派市民の力は、平成30年度予算(案)の賛成討論で、経済成長政策は、市の経済指標を構造的に分析し、リアリティーのある数値の裏付けのない事業には投資しない。人口減少は怖くない。小さくとも安全・安心の福祉が大きい北本市へ、どのように軟着陸させるか。住民と一緒に考える時が来ている。

 

「今でしょ」と申し上げた。

 


人生100年時代の「生きる力」をはぐくむ生涯学習社会へ

公教育の信頼回復を求めて

工藤日出夫の一般質問は、3月14日(水)行われ、北本市の教育政策について、以下のように教育長へ提案した。

小中学校にコミュニティスクールを導入すべき時ではないか

義務教育は国の決まりが多いが、子どものために市と現場の校長の裁量でできることもたくさんある。

 

コミュニティスクールは、地域の教育資源の活用で子どもと学校の社会力を高める効果がある。すでに習志野市秋津小学校で実証済である。

 

また、学校に高齢者など市民の聴講を認めることで、学校と子どもの社会力を引き上げる事例も増えている。発想の転換をする時ではないか。

市立中学校と県立北本高校を連携させた「公立中高連携一貫校」の創設を研究する時ではないか

学校の適正規模、再編成を進めることは、新しい学校像を創り出すチャンスでもある。再編成に合わせて、中高一貫校の研究を提案した。

 

北本高校の今年の受験志願率は0.75倍で、今後廃校の候補になる可能性が見えている。

 

何より市内から高等教育機関が無くなる影響は計り知れない。子どもの市外へ進学流出を防ぐことも必要である。

私立への指向が強まっている。公立学校の信頼を回復すべき時ではないか

4月になると大きなランドセルを背負った幼子や新中学生が駅のエスカレーターを登っていく。

 

公立の入学者数は、少子化で減るだけでなく、私立への入学で加速することが予測できる。これは将来の人口の転出にもつながる。

 

義務教育は、教科学力や経済力、価値観が単一的である私立に比べ、公立には多様な生活環境の子どもが混じりあう教育現場で、多様な価値観を認め合い自立した社会人を育てるメリットがある。

 

公立の信頼を回復する改革をダイナミックに推進すべき時ではないか。

文化センターをリカレント教育の拠点とすべき時ではないか

地域の高等教育、資格取得、専門技術の習得訓練の場。また、放送大学をはじめとした通信制大学や専門学校のスクーリングの教室に文化センターを開放すべきである。

 

育児休暇中の人や若者からシニアまで、休暇・退職等で再就職に向けた人のキャリアリフレッシュ。社会貢献事業の起業を目指す人のキャリアアップを図ることができる。

人生100年時代を見据えた生涯学習社会へ転換すべき時ではないか

地区公民館を学習と地域活動、自治の拠点に戻すことが必要である。

 

小規模多機能自治で地域住民の生活を支援する活動。地域の包括的な福祉の拠点。学校教育と地域をつなぐ、また住民と行政をつなぐ結節点として。市民の自己実現、住民自治の振興で人生100年時代に対応する教育改革の幕開けを求めた。


解説

●国は「人づくり革命」や「働き方改革」を進めようとしている。中央教育審議会は、平成30年度からの第3期教育振興計画を、人づくり革命に起き、生涯教育やリカレント教育を柱に据えた。

 

働き方改革に対応するためには、これまでの内向きの教育を「世界標準の教育」に変える必要がある。無限の可能性のある子どもに、人生100年に向けた教育改革が必要である。

 

●3月26日の朝日新聞朝刊(教育欄)に、OECD(経済協力開発機構)の国際的な学習到達度調査(PISA)を統括する、アンドレアス・シュライヒャー氏(OECD教育・スキル局長)が来日し、調査の意義とこれからの目標を語った記事が載っている。

 

●PISAが始まってから20年になるが、各国の教育に与えた影響で一番大きいのは、「教育についての考え方や視点を広げたこと。カリキュラムに縛られずに考え方や理解力を調べようとしたPISAは、コンピテンシー(能力や特性)の概念で、いま多くの国が使っている」と述べている。

 

日本も、記憶力重視から、考える力を重要視するようになっているだろう。

 

●今年18年にグローバル・コンピテンシーを調べる。日本は、この調査の参加を見送ったが「PISAの参加国は80超に増えた。しかし調査に参加したのは28か国。

 

理由は、自国の生徒が十分に能力を蓄えていないことを明らかにしたくないからである。ただ日本の理由は分からない。政治的判断と思う」と語った。

 

●日本の教育改革について、「06年に日本で講演したとき、ゆとり教育は失敗したと聞かされた。教える内容を減らし、成績が下がったと。しかし、PISAの結果を分析すると。成果が複数ある問題に対応する力が最も伸びていたのは日本だ。

 

知識(工藤の理解で記憶力?)で12P下がることと、創造的スキルが4P上がることはどちらが大事か。社会は性急に判断したくなるが、教育への投資効果は時間が必要だ。」と苦言ともとれる内容であった。

 

●OECDは生涯教育の理念をリカレント教育として経済社会の変化に対応しようとした。PISAは日本の記憶型知識から、読み取り、考え、新しいものを創造する力へと変えようとしている。日本の政治は、保護者や組合を悪者に見立て偏向教育を宣伝し、以前19世紀型(修身)のような教育へのノスタルジーがあるように思う。

 

●世界標準の教育は「ラーニング」。生涯学習へと変わっている。

 

地方教育行政こそ、地域の子どもの人生100年時代を視野に、世界標準に大きく変わる勇気を持つべきと考える。過去の郷愁に慕っている時ではない。

 

(文/工藤日出夫)



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